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guest talkゲストトーク

株式会社b-ex 代表取締役社長 福井 敏浩 × SAMURAI代表 クリエイティブディレクター 佐藤可士和

略称を社名にしてコミュニケーションスピードをアップ
CIのアップデートで最先端のブランディングを実現

株式会社b-ex 代表取締役社長 福井 敏浩 × SAMURAI代表 クリエイティブディレクター 佐藤可士和

2015年の社名変更を伴うブランディングを経て、2021年3月29日に社名を株式会社b-ex(ビーエックス、以下b-ex)に変更。今回もそれを手がけたのは、ユニクロやセブンイレブンなどのブランディングで知られる佐藤可士和氏。当社代表・福井とこの6年間を振り返りつつ、b-exへと社名をアップデートした背景について熱く語っていただきました。

――これまでのブランディング施策を振り返って印象に残っていることは何ですか。

佐藤
印象的だったのは、CIをつくり、社名をビューティーエクスペリエンスにした時は、まだ「Oneビューティーエクスペリエンス」にしようと決めていなかったのですが(当時はカンパニー制をとっていた)、翌年お会いした時に「Oneビューティーエクスペリエンス」にしたとおっしゃっていたことです。
福井
当時は色々な製品があり、分社経営をしていたのでコーポレートブランドもたくさんあったのですが、どれか一つに集中したほうがいいと思い、一本化したのです。
佐藤
ダイナミックなご決断でした。そのプロセスも変わっていく上で重要なことです。ドラスティックに色々変えてしまうと不具合も起きてしまうので、段階を踏んでやっていくのはすごくいいことだと感じました。
福井
やってみないと見えないこともあります。
佐藤
そうですよね。経営とクリエイティブが一体となることで、より強い企業がつくれるのだと思います。

――社名を変更した、率直なご感想はいかがですか。

佐藤
モルトベーネでやっていたことよりさらに次の段階に行きたいとおっしゃっていたので、プロセスとしては「何をするのか」を決めることから始め、「新しい美の体験をデザインする」ということをスローガン化した結果、「ビューティーエクスペリエンス デザイニングカンパニー」というコンセプトが決まりました。これは多分、福井社長的にすごくしっくりこられたと思うのですが。
福井
そうですね。それを具体的にどう表現するべきか悩みましたが、「ビューティーエクスペリエンス」というのをそのまま社名にしました。
佐藤
僕も様々なブランディングを手がけてきましたが、社名があって、ミッション・ビジョン・スローガンがあって、それを体現した製品がある、というのが普通です。しかし御社の場合は社名とミッションが一致しています。コンセプトがそのまま社名になっているので説明するレイヤーを1つカットでき、スピード感を持ってコミュニケーションできる。これはものすごく新しいやり方だと思います。

――ブランディングの成果をどう感じていますか。

福井
ミッションがそのまま社名なので、一貫性を持ったミッションやビジョンをお客様に効率的に伝えやすくなったと思います。
佐藤
“Mission” “Vision” “Value”から成るb-ex wayをまとめるのもご一緒させていただいたのですが、企業理念や社員の方一人ひとりの行動を整理するのにいい作業だったと感じています。
福井
今、b-ex wayがそのまま人事行動評価の基準にもなっていますので、企業理念が社員に浸透しやすくなりました。
佐藤
美容師さんなど社外の方の反応はいかがですか?
福井
美容師様には可士和さんファンの方が多いので、可士和さんにブランディングを手がけていただいたことにびっくりされることが多いです。
佐藤
そうなんですか。光栄です。
             
福井
どうやってお願いできたの? 紹介してください、と言われて困ったりすることもあるくらい(笑)、反響はすごいです。
             

――2021年3月29日、社名を「b-ex」へ変更するに至った理由は何ですか。

福井
「ビューティーエクスペリエンス」って長いよね、というのはよく言われていました。特に年配の方からは「エクスペリエンス」が言いづらいというお声もありました。社内では「b-ex(ビーエックス)」が浸透していましたから、略称を社名にすればもっとコミュニケーションスピードが上がるのではと思ったのがきっかけです。
佐藤
社内では「b-ex(ビーエックス)」という略称を使っていることを共有していただいていたので、福井社長からお話をいただいても意外性はありませんでしたが、本当に変えるんだ、という驚きはあったかもしれませんね(笑)。とはいえ、僕にとっても初めてのトライなので、すごくワクワクしました。
福井
CIのアップデート、と捉えています。
佐藤
そうですね。ミッション・スローガンは変えずに、時代に合わせて社名をアイコン化するといいますか。b-ex(ビーエックス)をひらけばbeauty experience(ビューティーエクスペリエンス)です、というイメージです。b-ex(ビーエックス)は社内及びステークホルダーに浸透したと思うので、そこで記号的にしてコミュニケーションスピードを速めていくというのは新しい戦略だと思います。社名変更でCIをアップデートするというのは初めてでしたので、非常にワクワクしました。もともと略称としてb-ex(ビーエックス)が浸透していたので、社内への心配はないですよね。
福井
そうですね、特に不安もありません。社外に対しても、社内で浸透していればほとんど問題ないと考えています。今までもお客様にb-ex(ビーエックス)という略称でプレゼン等を行っていましたし、お客様から「なんて呼べばいいですか?」と聞かれたら「b-ex(ビーエックス)でお願いします」とお答えしていましたから。それを社名に変えたところでそれほど抵抗はないのかなと思っています。
佐藤
アフターインターネットのコミュニケーションのやり方そのものという感じです。昔とはずいぶん違い、社名をそういう風にアップデートしていくことがコミュニケーション戦略の核になっている。社名をコミュニケーションのメディアとして使うのは、SNS時代の新しいやり方だと思います。

――ハイフンが入っている理由を教えてください。

佐藤
そこも議論しましたよね。bexだと知らない人から「ベックス」と読まれてしまうこともあり、それはよくないよねという…。ハイフンを入れるかスペースを入れるか、bだけ大文字にするかなど検討した結果、デザインを色々考えてみて、いちばん自然なのがハイフンなのではないかという結論に至りました。また、シンボルマークも色を少し強めに変えたのですが、beauty experienceとb-exとではかなり文字数が異なりますので、シンボルマークとロゴのバランスの調整には時間をかけました。いちばんロゴがよく見えるようにシンボルマークの見え方に工夫を凝らしています。
福井
デザインがパーンと目に入ってくるので、アイコンとしてアップデートしていただいたなと感じています。
佐藤
新鮮な感じになりましたよね。

――今後、どのような会社にしていきたいですか。

福井
今までもデジタルに力を入れてやってきましたが、withコロナということもあり、引き続きデジタルには力を入れていきたいです。その意味でb-exという社名のほうがイメージを伝えやすいと思い、今回、略称を社名に変えました。また当社はB to B、B to B to Cなので、今後はB to Cを展開してみたいと思っています。
佐藤
いいですね。B to Cなるとわかりやすいコミュニケーション戦略が可能になるので、b-exの認知度も上がり、やりたいことへの理解も進むと思います。「新しい美の体験」をもっと進化させやすいのかなと。
福井
ブランディングをしてまだ6年ほどですので、社内向けには何か大きく変える予定はないですが、インナーブランディングと言いますか、まずは社員の中でもっとムーブメントをつくって色々発信していきたいと考えています。
佐藤
今回の件も含め、b-exは本当に進化のスピードが速いですよね。6年前に1年間かけてディスカッションしたことがよかったのかなと思っています。その後の展開がすごく速くて、6年前のいちばん最初に伺った時の会社とはまったく別の会社になっているくらいです。福井社長ご自身はそこで毎日活動しておられるので、その変化をそれほど感じられないかもしれませんが、すごいスピードで進化したと思います。今回さらにコミュニケーションスピードを上げるために社名のアップデートをし、次にたとえばB to C向けのショップができたりすれば、さらに変革がスピードアップします。今はそういう時代なのかなとも思いますが、b-exには常に倍速のようなスピード感でこれからも進化していっていただきたいと思います。
福井
ショップもやってみたいですが、今後当社としてはより社会課題への取り組みをしていきたいと思っています。SDGs、特に環境ですね。コロナで環境に対する意識も高まってきているので、何か環境に対する問題解決のプロジェクトを可士和さんと一緒にできたらと思っていますが、いかかですか。
佐藤
そうですね。前々から環境問題はありました。本当に後戻りできないところまできてしまって、ここ何年かでサステナブルに対する意識が上がり、大きく変わりましたよね。コロナのような世界的パンデミックが起き、地球規模の社会問題がたくさんある中で、企業がそういうことに対してどう向き合うのかが問われる時代になりました。自分たちの利益だけでなく社会の利益をどう考えるかということをより強く求められています。デザインというのは、さまざまな問題を解決するプロセスだと思うので、僕はクリエイターとして社会の課題を解決していくような取り組みもb-exとご一緒できたらうれしいです。

佐藤可士和 氏
クリエイティブディレクター。クリエイティブスタジオ「SAMURAI」代表。

さまざまな企業のグローバルブランド戦略や、トータルプロデュースを手がける。時代の空気をデザインという形で表現し続けている。http://kashiwasato.com/

佐藤可士和 氏