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guest talkゲストトーク

常に美しさを追求するのが宝塚。
元男役ならではの、新しい女性像を創りたい。

株式会社ビューティーエクスペリエンス 代表取締役社長 福井 敏浩 × 女優 霧矢 大夢

今回は2015年6月3日に創業40周年を記念して刊行した当社代表 福井の書籍「髪が教えてくれる美しい人の秘密 beauty experience」でも対談させていただきました女優の霧矢 大夢さんにインタビュー。書籍には入りきらなかった貴重なお話をたっぷりお届けいたします。

――美しさを伝える「姿勢」

福井
私たち『ビューティーエクスペリエンス』は、その名の通り、『美』をテーマとする企業です。究極の美を体験できる場である宝塚。その男役トップであった霧矢さんの、美意識について伺いたいと思います。
霧矢
私は、"美しさ"は、カタチから入るというのも大事なことだと思います。姿勢が悪くてうつむいて歩いていると、やはり美しいとはいえないですし。笑顔が自然にできるか、なども重要ですよね。 宝塚は男役・女役に限らず、"美しく見せること"を、最も大事にしている劇団なんです。衣装の着こなし、メイク、ヘア、立ち居降る舞いまで、すべて美しさを意識する、ということを徹底的に訓練します。そして、その美意識が、大劇場の最前列から最後列まですべてのお客様に伝わるように心がけるんです。
福井
なるほど。姿勢やヘアメイクというカタチを整えることは大切なんですね。
霧矢
はい。ですから、オンでもオフでも、常に姿勢は意識していますね。特に宝塚のころは、外に出てもファンの方が見ているし、見るからに男役だとわかるようにしていました。衣裳もすごく重いので、着て姿勢を正しているだけで自然にインナーマッスルを使っているんです。
福井
あの衣裳は、やはり重いのですね! 着ているだけで美しさが創られる訳ですね。
霧矢
けれど、退団して普通の軽いものを身に着けるようになると、体への負荷が減ってしまって。ついつい体が楽なほうに流れてしまうので、改めて姿勢には注意するようにしています。気がつくと片足だけに体重をかけていたりするので…。 台所に立っている時も、体の中心に体重をかけたり、骨盤の位置に気をつけたり。座る時も足を組まない、背もたれにもたれないなど、意識をしています。それだけで、本当にお腹が締まってきますよ。

――男役の美学

福井
確かに霧矢さんにお会いすると、スッとした立ち姿と、強い眼差しが印象的です。宝塚を退団なさったのは2012年で、近頃では様々な舞台で新しい役柄にチャレンジなさっていますね。
霧矢
女性の役柄の中でも、アクの強い役をいただくことは多いですね。パンチは出せますので! じつは"女性らしい美しさ"というものに関しては、まだまだ修行中の身なんです(笑)。宝塚では18年間男役をやらせていただいていて、今はまだ、日常生活でも"男"になってしまう部分があります。スカートをはいた時の動作も、練習をしないとできなかったり(笑)。宝塚の先輩方にも「18年間男役をやっていたら、役を抜くのに同じくらいの期間がかかるよ」なんて言われました。 でも単に男役を抜く、ということではなく、男役を経験したからこそできる、新たな女性像を創っていきたいと思っています
福井
やはり宝塚には、特に男役には、独特の美学が存在しているのですね。
霧矢
男役は、立ち方一つとっても全く違って、肩幅くらいに足を開いて、しっかり地に足をつけるんです。普通の女性なら5歩くらいかかる距離を、3歩くらいで行く。女性を守るナイトのように自信に満ち溢れた振る舞いをするんです。 今でも男っぽさがふとした時に出てしまったり、ついつい肩で風を切ってしまったり。演出家の方から「今のはちょっと男前です」って注意されてしまうこともあるんです(笑)。
福井
究極の男前、理想の男性像ですね。
霧矢
そうなんです、まさしく宝塚では、男役として理想的な男性像を追究してきたんです。けれども退団して思うのは、宝塚の男役ほどカッコいい男性は現実にはそうそういない、ということ。女性が理想だと思う男性像を極端に創るからこそ、宝塚の存在意義があるんですね。それを現実の男性に求めてはいけない、男役目線で男性を見てはいけない、ということを、退団後3年経ってようやく少し学んだんです(笑)。
福井
男性の私には少々耳が痛いです(笑)。
霧矢
トップという立場で男役を演じさせていただいていると、責任感から自然と"包容力"みたいなものが出てしまうんでしょうね。自分がシャンとしていなければとか、しっかりしなければという気負いもあるので、目力も強くなってしまうし、男前感が滲み出てしまう(笑)。 理想のタイプは「自分よりも包容力のある人」なんですが、なかなか難しいですね。この人を守ってあげなければ、というよりも、この人は一人で大丈夫だな、っていう感じに思われてしまうのが困ります(笑)。

――無理せず基本のケアを

福井
確かにお話ししていて、本当に格好いい方なのですが、同時に大変女性らしい部分も感じます。ヘアスタイルひとつ取っても、霧矢さんならではの美意識があるように思います。
霧矢
ありがとうございます。今、少し髪を伸ばしているのですが、髪が長めだと内面が男っぽい感じでも、カッコいい女性らしさが引き出せて、よいバランスになる気がします。
福井
その通りだと思います! ヘアに関しては、どのようなケアをなさっていますか?
霧矢
宝塚時代は、髪は"傷むもの"で仕方ないと思っていました。男役はずっとショートだし、髪には悪いことばかりしてきました。ハードなカラーもする、パーマもかける……。髪をがっちり固めるんですが、セットチェンジでは急いでほぐしてまた固めて、といった具合です。セットチェンジが多い公演では、途中で髪が切れちゃったりすることもありました。トリートメントをしてキレイにしすぎると、今度はセットしにくくなってしまうので、あえてあまりしなかったんです。舞台さえ全うできればいい、という感じでした。 退団してからは、髪にかける時間はすごく増えました。女性っていろいろ大変ですね(笑)! サロンにはまめにトリートメントに行きますし、普段もシャンプー後にヘアオイルを使ってケアしています。ちゃんと乾かしてから寝るようにもしています。
福井
やはり手をかけた分だけ、髪はきちんと応えてくれるものですね。すごくヘアケアの成果が出ているのがわかります。その他の美容に関しては、何か気をつけていることはありますか?
霧矢
ふだんの美容は、普通に洗顔して保湿、紫外線対策をするくらいです。 じつは宝塚のときはほとんど家から稽古場、劇場までの往復だけで、移動は常に車。朝に劇場に入り、夜までずっと外に出ないことも多かったので、日に当たることがあまりなかったんです。退団してからは、もっと世間を見なければと思って、電車や自転車に乗ったり、歩いたりして、自分で目的地にいくことも増えました。それではじめて、紫外線対策が必要なんだ、と実感するようになりましたね。
福井
すごいですね! やはり宝塚のスターは本当に別世界の住人のようですね。他に心がけていることはありますか?
霧矢
質のよい睡眠をとることと、冷えに注意して代謝をよくすることでしょうか。冷えやすい体質なので、どんなに帰りが遅くなっても、一回湯船に浸かって体を温めてから寝るようにしています。 食事は、朝食はちゃんと摂るように心がけています。稽古や本番が始まると、お昼は食べるタイミングがなかったり不規則になったりするので、一日一食だけはきちんと栄養バランスを考えて食べればいい、と思っています。夜中に帰ってきた時とか、よく自分を甘やかしますし(笑)。
福井
甘やかすんですね(笑)。これだけは自分に禁じているとか、そういったマイ・ルールなどはありますか?
霧矢
そうですね。禁止事項やきっちりした決まりごとを作るというより、大まかなことを守っている感じですね。 「水分はとるようにしよう」「体はなるべく動かすようにしよう」というような、ゆる~い感じで。できなかったらできないで、まあいいか、って(笑)。
福井
お話を伺っていても、宝塚のトップという立場は、ものすごいプレッシャーもあったのだと感じます。メンタルの部分では、美のためにどのようなケアをしていらっしゃいますか?
霧矢
落ち込んだ時は、ともかく無理をせず、負のスパイラルにはまっている自分を認める。そしてとりあえずは寝てしまって、やり過ごします。ある程度、時が解決するのを待つんです。よいことも悪いことも受け止め、ある意味、ニュートラルにやり過ごして、前に進んでいく。その繰り返しですね。 精神的に充実していないと、やはり見た目にも影響が出てしまうと思うんです。心が安定していてはじめて、自分から発信するという強い気持ちを持てますし、舞台の上でお客様に自分のエネルギーをきちんと伝えることができると思うんです。

――個性と情熱、他人への思いやりが美の要素

福井
輝くためのエネルギーを蓄えるには、リラックスした時間をしっかりと作ることも必要なのですね。ところで、霧矢さんご自身の考える"美しい人"とは、どんな人ですか?
霧矢
トータルで何か醸し出すものがある人でしょうか。流行に流されず、ファッションも好きなものを着ている人。情熱を持って好きなことをしている人。思いやりがあって笑顔がいい人。やっぱり素敵ですよね。 美しさを磨いても、相手にきちんと伝わらないと無駄になってしまうと思うんです。何でも人の言うがままで自分らしさを持たず、主張しない女性というのは、ちょっともったいない。自己顕示ということではなくて、まずはちゃんと人に挨拶するとか、相手の目を見て話すとか、そうした基本的なことを当たり前にできる人は、やっぱり美しいのではないでしょうか?
福井
そうですね。きちんと自分を表現できている女性は、やはり際立って美しいな、と感じます。
霧矢
きちんと自分自身を表現することって難しいですよね。私は自分のことは自分の言葉で伝えたいんです。SNSやネットが表現手段になってしまって、みんな、スタンプとかで安易に気持ちを伝えてしまいがち。でも、それってじつは本心がわからないんじゃないか、って思うんです。おどけて笑っているスタンプを送っているけれど、打ってる本人は真顔だとか。それって怖くないですか(笑)?
福井
たしかにそうですね(笑)。
霧矢
せめて文字で「うれしいよ」とか「ありがとう」って伝えたほうがいいと思うんです。そうしたことを省略していたら、いざというときにきちんと伝える能力がなくなってしまうんじゃないかな、って考えてしまいます。 いろんなものに実際に触れて感性を磨いたり、人と人との間で生まれる感情を糧とすることで、表現力が増して、自ずと美しさも磨かれてくるのではないでしょうか。
福井
感性を磨いて、表現力をつけていくことも美しさの秘訣なのですね。 本日はありがとうございました。

今回お伺いしたお話の他にも、美しさの追求について様々なお話をしてくださった霧矢さん。
そんな霧矢さんの美の秘訣がたっぷり詰まったこちらの書籍を是非ご覧ください。

書 名  : 髪が教えてくれる美しい人の秘密 beauty experience
著 者  : 株式会社ビューティーエクスペリエンス 代表取締役社長 福井 敏浩
出版社  : ダイヤモンド社
定 価  : 1,400円 (税別)
発 行  : 2015年6月3日
判 型  : A5判並製 136ページ オールカラー
ISBN : 978-4-478-06610-2

髪が教えてくれる美しい人の秘密 beauty experience

霧矢 大夢さん
女優。1994年に宝塚歌劇団に入団。2010年より月組トップとして活躍。2012年に退団し、コンサートや舞台など活動の幅を広げている。2015年に第22回読売演劇大賞優秀女優賞受賞。http://www.hiromukiriya.com

霧矢 大夢さん