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大樹 「今考えると危ういなと思うこともあります。お店にお客様が満杯になり、スタッフも増え、それから出店するのが普通といいますか安全な流れだと思いますが、僕たちは店舗を作ることを先に決めて、そこに向けて走りながらお客様やスタッフを集めていったという感じでしたから。」
翔太 「とにかくチャレンジしたかったんです。兄と話しながら、リクルートの意味も含めて都会に出店しなければいけないということで3店舗目は福岡の天神に出店し、4店舗目の佐賀店は、久留米に1店舗目を出店した時と同じような理由で商機を見出し、佐賀に出店しました。」
大樹 「新規出店場所についてはもちろん様々なリサーチもしますが、“ビビッときた”という僕の感性を弟がくみ取ってくれているのだと思います。」
翔太 「そうですね(笑)。兄はひらめき型ですが、僕は分析型。なぜ成功したのかというのを考えています。たとえば久留米の場合、近隣の市町村の人も久留米に来るのですが、サロンを検索する時「久留米」で検索するんです。東京なら青山とか銀座とかもっと具体的な地名で検索すると思うのですが、久留米の場合はなぜか「久留米」で検索する。なので、そこでおしゃれを打ち出していけば、簡単に集客できるわけではありませんが、着目されやすいと思いました。佐賀の場合も同じです。広範囲で検索して気に入ったサロンが見つかれば、歩いていける所ではなくても来てくれるんです。」
大樹 「『aoi.』はリクルートの意味合いが強いので、利益があまり出なくてもいいかなと思いながら出店しました。フラッグショップのような感じです。」
翔太 「まず『aoi.』にサロン見学に来てもらうというのがベースなので、そこで色々なうちの取り組みを伝えます。入社直後は『aoi.』で働きたいという子が多いのですが、入社して3カ月間の研修期間で全店舗を回ってもらうと、ほぼ全員、『aoi.』じゃなくてよくなるんです。都会で働くことより大事なことに気づく子が多いのでしょうか。結果、行きたい店舗がちょうどよくバラけるので、うまく回っているなと感じています。」
翔太 「最近はInstagramにシフトしつつあり、集客サイトへの比重が減ってきました。Instagramからの予約も個人に対してはありますが、DMで受付しすぎると、忙しい時に対応できない場合もありますので、基本的には自社のアプリをダウンロードしてもらい、そこから予約してもらうのがスタンダードです。」
大樹 「リピート率のことで言うと、僕は、何を学んできたかということも大事だけれど、どれだけ実績があるかというのがいちばん大事だと思っています。5店舗目はカラー専門サロンなのですが、そこはアシスタントがメインで運営するサロンで、お客様を担当する感覚を早い段階で習得させ、体験をさせて、デビューした時にある程度、お客様に慣れた状態になっているということが、リピート力を早く身に着けさせるための対策だと考えています。」
大樹 「1年半でデビューという設定にしています。僕はデビューするまで6年かかりました。もちろん僕自身の問題もありますが、人為的な問題が大半だったと思うんです。教える人が退社した、店舗を異動になった、教える人によってちょっとのことでも不合格になる場合がある…そういうことで遅れていきました。デビューの明確な基準ってないじゃないですか?その中で何がいちばん明確なのかと考えた時、「時間」がもっとも明確なのではないかと思ったんです。すべての無駄な時間を取り除いたらどれくらいになるのか?を計算した結果、1年半になりました。うちのカリキュラムは、○○を合格したから次の項目に行くのではなく、決まったペースで進んでいき、足りない人は練習したり講習に行くなどして自主的に補ってもらうというシステムです。今の美容業界では3年くらいが平均で、早すぎると反対されることもありますが、僕ら兄弟は理由がないことをそのまま続けるのはイヤなんです。みんながそうしているからといって放置せず、そういうことに対してメスを入れることも大事なことだと思っています。」
翔太 「兄と僕とでやることを分け、兄は現場に立って教育を中心にやってもらい、僕は裏方で経営のマネージメントをやる、というように役割分担をしています。定期的な打ち合わせやルールなどは特にありませんが、しょっちゅう話をしています。」
大樹 「僕らの中で住み分けができているので、お互いに自分のことに集中できていると思います。また、僕は以前から思ったことを前触れもなく弟にLINEをするという習慣がありまして。」
翔太 「そうだね。よくあるね。」
大樹 「これをやってみたいとか、これをやるとどうだろう、というようなことを書くだけなのですが、その中で生まれた案が採用になることもあります。ボツになるものがほとんどですが、これまでのことも、ほぼこのLINEから生まれました。佐賀の出店もそうです。」
翔太 「サロンの形態を考えた時に、技術だけで生産性を上げていくのはとても難しく、店販にももっとしっかり取り組んでいかなければいけないという思いで始めました。「地域いちばんの話題性」を発信する上でおしゃれな物に特化して展開しています。これがうまくいけば、よりうちらしい店販ができるのではないかと思っています。」
大樹 「まだまだ順調とまでは言えない段階ですが、これをやることによって見えてくることがあります。売る物を一生懸命選んだとこで、売り方をちゃんとしないとなかなか売れないということが体感的にわかってきました。シャンプーやケア剤などの店販は、これまでは美容師が推して売る、この一択だけでしたが、引いて売る戦略も取り入れないといけないと感じています。ディスプレイやSNSによる発信とか、そういう“引いた仕掛け”をたくさん作らないとダメなんだろうなと。この「キーダアパレル」がきっかけで、通常の店販対策のヒントを得られました。」
翔太 「確かに。SNSの重要性も増していると思っています。今後はInstagramやYouTubeなどを活用して、もっと動画を配信していけたらいいなと思っています。」
「美容師として覚えておいてほしいこと、仕事をする上で大事にしてほしいことなどを、兄がコラムにまとめて音声と文字の両方で毎週配信しています」(翔太)
「必ず聞いてほしいということではなく、よかったらチャンネル登録してねくらいの感じです(笑)。僕自身も試行錯誤しながら配信しています」(大樹)
「コンテストのようなクリエイティブな作品作りをするのもいいのですが、『keeda』ではお客様が普段の生活の中で体験できる範囲で、よりクオリティの高いものを目指してスタイルを作り、撮影して発信しています。サロンワークよりも半歩先を行くくらいのイメージです」(大樹)
「全店『keeda』にするとチェーン店のような感じがするので、あえてうちは全店変えています。どこの店舗でも、そこで働く人のオリジナリティが出てくればいいなと」(大樹)
「ブランド力が上がってくれば全店同じ名前でも僕はいいかなと思っています。今はまだブランド力がないので」(翔太)
「非日常とか、贅沢気分を味わえる、ちょっといい女になった気分になれる、というような体験を売っていきたいので、内装や小物、取り扱う物など、1つひとつこだわって選び、店舗ごとにデザインも変えています」(大樹)
「よくある手書きのポップみたいなものは絶対に置かないです」(翔太)
「センスをどうやって磨くか、という教育はしています。チームを組んで撮影をすることで他の人のセンスを垣間見たりすることもその一環です」(大樹)
「ちなみに2020年のテーマが“洗練”で、洗練された撮影やおしゃれを追求したかったのですが、コロナでできなかったので来年に持ち越しです」(翔太)
「経営者意識を持ってほしいと思っていますが、現時点ではまだまだです。みんなまだ若いので仕方ないですが、期待しています」(大樹)
「幹部はこういうことを考えなければいけないという10項目を自分たちで考えて、それをみんなに発信していく取り組みを始めました」(翔太)
「それぞれ個人のアカウントを持ってやっていて、全員のInstagramを把握しています」(大樹)
「うちではスタッフが撮影した写真を買い取って、ホームページや『keeda』公式Instagramに載せています。選ばれなかったものを個人のSNSに載せるのはOK。撮影のモチベーションアップにつなげています」(翔太)
大樹 「地域でいちばんの話題性を作るサロンづくり」がコンセプトです。お客様は20~30代の女性が多く、新規客は女性に限っていますが、元々通ってくれている男性客もいます。オープン当初(2014年頃)は、久留米市周辺でネットを活用しているサロンがまだ少なかったので、ホームページや集客サイトでしっかり打ち出していけば勝てるのではないか、そんな思いで出店しました。とはいえ顧客ゼロからのスタートですから、Instagramで爆発的な集客をするのは難しいと思い、赤字を作らないよう集客サイトでアプローチをかけていきました。」
翔太 「僕は兄がサロンをオープンしてから約1年後に参加し、『NAVY』という2店舗目を一緒にオープンさせました。」